令和5年(2023)8月3日
チクチク療法普及会顧問
チクチク療法創始者
ナガタクリニック 長田裕
20周年に向けて
チクチク療法が2004年の3月に始まって以来、2023年は20年目を迎えています。そして、今年の7月18日に記念すべき手技書の英語版が刊行されました。題名は「PNST:Treatment for Pain and Numbness」と言います。略してPNSTブックと呼ぶことにします。
(PNSTはPrickling Neuro-Stimulation Techniqueの略です)。
2015年には「自分でできるチクチク療法」の英語版として「Heal Yourself with PNST」が刊行されました(下記。AmazonのURL: https://www.amazon.com/Heal-Yourself-PNST)。
PNST bookでのAmazonでのURLを記載します。
日本版
アメリカ版
英国版
その他、フランス、スペイン、イタリア、ドイツ語なども、Amazonから購入できます。
この無血刺絡手技書(以降、手技書と呼びます)英訳版は、私のライフワークの一つでありました。その計画は2009年の夏に始まっております。手技書の刊行が2009年6月ですから、その当時から、世界への普及を目指していたことになります。しかし、今回のPNSTブックは明らかに日本の手技書とは異なっています。それは、純粋な西洋医学書として書いたものだからです。
その相違点は、治療ポイントの記載にあります。手技書はツボ(経穴)を治療ポイントとして挙げて認めたため、主に鍼灸医学を学んだ人を対象としていました。私は、東洋医学を全く知らなかったのですが、書名を無血刺絡とした経緯から、治療ポイントにはツボ名を配置することに重きを置いていました。
しかし、チクチク療法が進化していくにつれ、治療ポイントは鍼灸で言うツボ(経穴、点dot)ではなく、線(Line)や面(Surface)にあることが判明し、その違いの記述をする必要性に迫られました。従って、今回のPNSTブックは全くツボ名を知らなくても、初心者でも、その治療ポイントをすぐに利用できるという点が、大きな違いであり特徴となっています。
そのため、その医療対象者を記載すると以下のような人たちになります。ここでの対象者は主に海外での治療家を念頭に置いたことによります。
主な対象読者:1 医師、2 歯科医、3 看護師、4 理学療法士、リハビリテーショントレーナー、5 接骨医、6 カイロプラクター、7 鍼灸師、8 その他の代替医療従事者等(ヨガ、アーユルベーダなど)。またその派生として、1 ペインクリニックの医師、2 一般開業医、3 神経内科医、4 脳神経外科医、5 皮膚科医、6 整形外科医、などの医師にも応用できる書物になっています。
次いで、この本の主な概要を、以下に記します。
PNSTブックの簡単な概要
背景と目的
体の特定の神経、デルマトームに関連する治療ポイントへ刺激することにより、PNST (痛圧神経刺激法) と呼ばれる非侵襲的治療法を確立することができた。非侵襲的な治療法であるため、従来の鍼治療や刺絡治療のように皮膚に刺入する必要はない。
脳神経外科医であった私は、疾患を治療するときに「病変そのもの」と、その病変の「デルマトーム支配」と「末梢神経走行」に注目した。病変を「交感神経の害」と名づけ、病変のデルマトームの位置決めを(脊髄)高位診断といい、そこでの脊椎棘突起間をゼロポイントと名付けた。
当初、刺激を与えるためのツールには、脳外科時代に使っていた「先のとがったピンセット」を使用したが、このツールで何百人もの患者さんを治療したとき、特に、治療直後の痛みや痺れに特化して治療効果をもたらすことが分かった。なぜ、尖ったツールにこだわったかというと、新潟大学名誉教授の故・安保徹先生が、「チクン」とした痛みは「副交感神経を刺激し治療効果につながる」と唱えていたからである。
このコンセプトに魅了されチクチク刺激だけで効果が得られるなら、人体に針を刺入する必要はないと判断し、治療手段として「痛み刺激」による痛圧刺激療法を考えだした。
治療ポイントについては、鍼治療における膀胱経がキーガン医師のデルマトームと近似していることから、2000年の歴史を持つ鍼治療と西洋医学の接点を見つけた。そこで、鍼灸理論とは全く違う治療手段を考えつくことができた。これは神経学を学んだからこそ、西洋医学のデルマトームを治療に使うという直感的なひらめきによって生まれたと思っている。
上記のプロセスから、脳外科医のキーガン先生の「デルマトーム図」(1947年)を使用して、19年間にわたる広範な臨床応用を行った結果、PNSTの有効性を確認した。
治療実績としては、2020年度末までに私自身が13万件以上、芝山鍼灸整骨院院長の芝山豊和先生が約30万件の治療経験を得た(新規症例としては私7千名以上、芝山3万名である)。現在、私はこの新しい治療理論を「デルマトーム理論」と名付け、普及活動に取り組んでいる。
私たちだけで数十万回も治療したが、PNST は「Do No Harm」な治療法であることが判明し、他の治療者によっても証明された。そして、実際、私たちは長い間、薬や注射や湿布、時には手術なしで問題の解決を再現可能な形で導いてきたという、明らかな臨床経験も積み重ねられた。
教育やセミナーに関しては、過去10年間で80回以上のPNSTセミナーを日本で開催しており、セミナーに参加した多くの治療家が自らの臨床実証研究を行っている。 インドでもセミナーが開催され、医療従事者らがこのチクチク療法を実践している。
ブラジルの治療家のグループが診療で PNST を使用し始めているが、2021年度には、ブラジルでオンラインセミナーが2回行われ、私が講師を務めた。
このようなPNSTへの関心の高まりを受け、無血刺絡手技書を英語に翻訳して出版したいと思った。私の手技書の英語版が出版され、世界中の医師やその他の治療家が PNST を使ってくれれば、PNST は一般的な治療法となり、非常に安全で信頼性が高く、安価な治療法として患者さんに喜ばれると私は信じている。 そして、PNST は「未来の医療」への先駆けとして世界中で簡単に利用できるようになることを確信している。
この本を書いた目的は何か?
1 この治療法は非常に簡単で、治療時間も極めて短く、検査や投薬も必要ないため、患者さんの医療費はほとんどかからない。 さらに、高価な医療機器は必要なく、医療提供者はいわゆる尖ったピンセット(道具)や温熱療法機器などに限定した素材に投資するだけである。
2 この方法は、痛みや痺れを伴う疾患に特に効果的であり、通常、患者はその場で効果を実感する。 ただし、病理学的変性が完了した場合はこの限りではない。
3 過去に多くのデルマトームが発表されたが、私の 19 年間の治療経験から、キーガンデルマトーム図が最も適切なチャート図であることが分かった。 キーガン医師の研究を検討することは、治療家にとって非常に価値があると私は思っている。
この本は読者にどのような問題に解決を与えるか?
1 最大の特徴は、正しい治療法を学び、治療理論の基礎を理解すれば、患者さんでも治療できることである。 たとえば、自宅や外出先で打撲したり、軽い火傷をしたりした場合、自分で PNST を使用して痛みを軽減または除去できる。
2 難病や難治症例の場合、PNST は心療内科の指導や合理的な食事アドバイスと組み合わせると有用になる可能性がある。
以上が、PNSTブックを刊行した目的であり主意である。皆様のご理解のもと、このPNSTブックが有意義に利用して頂けることを期待して、刊行のご挨拶といたします。